「梅雨入りはいつも6月上旬」「お盆を過ぎれば野菜は落ち着く」——こうした長年の経験則が、ここ数年で通用しなくなっています。
2026年は梅雨入りの時期そのものが例年と異なり、雨が降るかどうかの予測も難しい年だと業界内で言われています。産地によって生育スピードが大きくばらつき、これまでの「○月になればこうなる」という勘が外れるケースが増えています。
本記事では、天候の予測がますます難しくなっている今、仕入れ担当者が「勘」に頼らずに対応するための考え方と、今すぐ実践できる具体的な仕組みづくりを解説します。
1. なぜ「いつもの感覚」が通用しなくなっているのか
長年仕入れを担当してきたベテランほど、「経験的にこの時期はこうなる」という感覚を頼りに発注しています。しかしこの感覚が、近年の気候変動によって裏切られる頻度が増えています。
・梅雨入り・梅雨明けの「いつも通り」が崩れている
業界内では、梅雨入りの時期が年によって大きくぶれる、雨が降るか降らないかの予測そのものが難しくなっているという声が出ています。「6月上旬には梅雨入りするだろう」という前提で仕入れ計画を立てると、実際の天候とズレて対応が後手に回ります。
・産地ごとの生育スピードのバラつきが拡大している
2026年は春先から、産地によって野菜の生育スピードが大きくばらついている状況が報告されています。同じ品目でも産地Aは順調、産地Bは遅れているという状況が起きると、市場全体の供給量の予測が立てにくくなり、価格の動きも読みにくくなります。
・「9月を乗り切れば落ち着く」という常識も過去のものに
従来は「秋になれば野菜の価格は落ち着く」というのが業界の共通認識でした。しかし近年は8月末から10月にかけても気を抜けない状況が続いており、年間を通じて「いつ高騰してもおかしくない」という前提で仕入れを考える必要が出てきています。
経験則が通用しないということは、「先月までのパターンが続く」という前提で仕入れ計画を立てるのが危険だということです。月ごとの市況確認を怠らないことが、今まで以上に重要になっています。
2. 「天候の読みづらさ」が直撃しやすい野菜と、その理由
すべての野菜が同じようにリスクを受けるわけではありません。天候不順の影響を受けやすい野菜とそうでない野菜を理解しておくことで、リスク管理の優先順位がつけられます。
水菜・クレソン・パクチーなど「繊細な野菜」を看板メニューで多用している店舗ほど、天候リスクへの備えを優先すべきです。代替候補を持っているかどうかが今後の経営の安定性を左右します。
3. 「勘」から「仕組み」へ——天候リスクに振り回されない仕入れ体制
経験則が通用しにくくなっている今、個人の勘や経験に依存した仕入れから、誰がやっても同じ判断ができる「仕組み」への移行が必要です。
仕組み①:天気予報と発注量を連動させるルールを作る
「来週は雨が続きそうだから葉物の発注を減らす」「猛暑が続くなら鮮度劣化の速い品目を控える」——こうした判断を担当者の感覚に任せるのではなく、明文化したルールにしておくことが重要です。たとえば「週間天気予報で雨マークが3日以上続く場合、葉物の発注量を15%減らす」というように、数値化したルールを作っておくと、担当者が変わっても同じ判断ができます。
仕組み②:品目ごとに「代替候補」を平時から決めておく
突発的な高騰が起きてから代替品を探すのでは遅すぎます。繊細な野菜(水菜・クレソン・パクチーなど)を使うメニューには、あらかじめ代替候補を1〜2品決めておきましょう。「水菜が高騰したら春菊に切り替える」というルールを事前に料理長と合意しておけば、高騰が起きた瞬間に迷わず動けます。
仕組み③:複数の仕入れ先を「リスク分散」として持つ
産地ごとの生育バラつきが大きくなっている今、1つの産地・1つの業者に依存することのリスクは以前より高まっています。異なる産地から仕入れている複数の業者と取引することで、ある産地が不作でも他の産地でカバーできる体制を作れます。
仕組み④:月次の市況確認を「習慣」として固定する
経験則に頼れない以上、毎月の市況情報を確認する習慣を持つことが唯一の対抗策です。農林水産省が発表する「野菜の生育状況及び価格見通し」は毎月更新されており、無料で確認できます。月初に5分でも確認する習慣をつけるだけで、「経験則が外れて慌てる」という事態を大きく減らせます。
農林水産省「野菜の生育状況及び価格見通し」は毎月末頃に翌月分が公表されます。無料会員登録できる市況情報サイトと合わせて確認する習慣をつけることをお勧めします。
4. 今年(2026年)後半に向けて、特に警戒すべき時期
業界内の見方では、2026年は8月末から10月にかけての仕入れに、例年以上に慎重な姿勢が必要だとされています。「秋になれば落ち着く」という従来の感覚を一旦リセットし、夏の終わりから秋にかけても警戒を継続することが推奨されています。
この見通しを踏まえると、「夏を乗り切ったから秋は気を抜ける」という判断は今年は危険かもしれません。7〜8月の仕入れ計画を立てる際に、9〜10月分の代替品検討も同時並行で進めておくことをお勧めします。
5. 天候リスクに振り回されないために、今週できること
天候が読みにくくなっている今、「長年の感覚」だけに頼った仕入れはリスクが高まっています。
天気予報と発注量を連動させるルール、代替品の事前準備、複数仕入れ先によるリスク分散、そして月次の市況確認という「仕組み」を持つことが、天候に振り回されない仕入れ担当者になるための具体的な方法です。
「今年は何かいつもと違う」と感じている方は、その違和感が正しい可能性があります。感覚に頼るのをやめ、仕組みに置き換えることから始めてみてください。
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