冷凍きのこは栄養が落ちる?旨味を増やすプロの保存術と仕入れのコツ【2025年10月版】

「冷凍したら栄養がなくなるのでは?」——秋のきのこが店頭に並ぶと、毎年のように耳にする疑問です。結論から言うと、冷凍したからといってきのこの栄養が一気に失われるわけではありません。むしろ旨味が増すという、飲食店にとって嬉しい“副産物”まであります。今回は、一般消費者の方のニーズ(栄養・安全)と、飲食店方々の実務(仕入れ・保存・原価)の両方を記載しています。きっとあなたの食卓はもちろん、業務用の厨房でも即使える手順に落とし込み、物価高を乗り越えて秋の味覚を楽しんでいきましょうね。

 

冷凍しても栄養は守られ、旨味は高まる?

ビタミンDは比較的熱や冷凍に強い脂溶性ビタミン。調理・保存過程での損失は限定的です。きのこが持つうま味成分グアニル酸は、冷凍→解凍で細胞壁が壊れることで抽出されやすくなり、スープや炒め物の味が濃くなります。

グルタミン酸(野菜・昆布等)やイノシン酸(肉・魚)と相乗効果を起こすため、“少量で味が決まる”=原価を下げやすい。つまり、冷凍は「品質を落とす行為」ではなく、**“旨味を強化する工程”**と捉えるのが今回の視点となります。いかがでしょうか?このように考えればずっと料理のバラエティが増え、価格を抑えられると思います。

 

きのこの栄養学:ビタミンDとβグルカン

⚫︎ビタミンDのポイント

・きのこは植物性食品では珍しく**ビタミンD(D2)**を含有。

・ビタミンDは腸でのカルシウム吸収を促進し、骨・筋機能の維持に寄与。秋冬の日照不足の時季に食事から補う価値が高い。

・一部のきのこは天日干しやUV照射でD2が増える性質があり、乾しいたけ等は“栄養濃縮版”。冷凍で大きく減る栄養素ではありません。

 

⚫︎βグルカン(食物繊維)

・きのこ特有のβグルカンは水溶性食物繊維。腸内環境の改善、血糖応答の緩和、免疫細胞の活性化に関わります。

・秋冬の体調管理・健康訴求メニューに相性が良く、POPやメニュー説明に“機能の言語化”を一行添えるだけで価値が伝わります。

科学で理解する「冷凍で旨くなる」理由

・きのこの食感は細胞壁中の多糖類に依存。急冷で微細な氷結晶ができ、解凍時に細胞破壊→グアニル酸が遊離しやすくなります。

・グアニル酸は加熱で香りが立つため、凍ったままフライパン投入するとドリップごと旨味が鍋に入ります。

・ブランチング(湯通し)は基本的に不要。ただしえのき・しめじは30〜40秒の湯通しでえぐみを落とし、表面水分を拭いてから急冷すると匂い戻りを抑制可能。

 

⚫︎冷凍のおすすめ手順

・下処理:石づきを外し、汚れは湿らせたペーパーで。水洗いは香り流出の原因になるため極力避ける。

・カット:用途別に切り分け。エリンギは縦スライス/角切りの2種、しいたけは薄切りと厚切りを用意。

・予冷:冷蔵で30分冷やしてからトレイに重ならないよう広げる。

・急冷:−18℃以下で2〜3時間の急冷。家庭フリーザーなら金属トレイを使う。

・保存:フリーザーバッグに入れ空気を抜く。1袋300〜500gで小分け。1〜2か月を目安に使い切り。

・調理:解凍せず投入。炒め物は油を先に温め、鍋は沸騰液へ。ドリップ=旨味として活用。

 

ポイント:霜=庫内の乾燥。ジッパー内の空気を抜き、使いかけは再び空気を抜いて即冷凍。

 

以上のように手順を踏んでいただければ保存のメリットを満たしつつ、旨みをさらに引き出すことができる2度おいしい技となります。

 

きのこ品目別・最適保存と使い道の一例

⚫︎しいたけ

保存:軸ごと薄切りにして冷凍。香りを最大化。乾しいたけは常温で。

調理:ソテー/炊き込みご飯/出汁。厚切りはステーキのように焼き目を。

 

⚫︎しめじ

保存:房を小割りにしてバラ冷凍。

調理:和風パスタ、バター醤油、味噌汁。ドリップを捨てない。

 

⚫︎えのき

保存:根元を落として3等分→軽く湯通し→急冷。滑らか食感を保持。

調理:中華炒め/とろみスープ。旨味の出方が早い。

 

⚫︎まいたけ

保存:手で裂いてIQF。香りが飛びやすいので密封厳守。

調理:天ぷら/ガーリックソテー。衣が旨味を抱き込む。

 

⚫︎エリンギ

保存:縦薄切りと角切りに分けて冷凍。用途で食感を使い分け。

調理:ステーキ/アヒージョ/串焼き。肉代替の主役にも。

 

⚫︎マッシュルーム

保存:ブラウンは風味強。薄切りでバラ冷凍。レモン少量で褐変抑制。

調理:クリームソース、リゾット、ハンバーグのデュクセル。

 

⚫︎以下、当方からの業種別に使用できる例の提案

居酒屋:まいたけ天・しいたけ肉詰め・エリンギ串。仕込みは冷凍下味で回転UP。

カフェ:きのこ×グレインボウル、ポタージュ、ホットサンド。健康訴求POPが効く。

和食:土瓶蒸し、炊き込みご飯。乾しいたけ出汁×生きのこで香りの二段構え。

洋食:デュクセルの仕込みを冷凍ストック。パスタ・ピザ・ソースにも使える。

ラーメン:乾しいたけ戻し汁で旨味を底上げ。トッピングにも使える。

ホテル・バンケット:規格外MIXを大皿グリル/ソテーへ。写真映えで客単価を維持。

 

きのこ仕入れ戦略:国産・輸入・規格外を使い分ける

・国産(東北・九州):しいたけ・まいたけ(東北)は香りと肉厚が武器。えのき・しめじ・エリンギ(九州)は周年安定+大ロットで価格が読みやすい。

・輸入(欧州のマッシュルーム、中国産えのき等):為替・物流の影響を受けやすい。冷凍前提の仕込みに限定し、鮮度勝負の生食には使わないなど、用途の線引きを。

・規格外の活用:見た目の不揃いは加工メニュー(ソース・スープ・餡)に回す。kg単価が2〜3割下がるうえ、歩留まり差は調理で吸収できる。

 

⚫︎仕入れ時の失敗あるある

・単一産地に偏る → 台風で入荷減。

対策:東北+九州の二本柱、輸入はサブ。卸に事前の代替表を依頼。

 

・冷凍焼けで風味劣化 → 袋内に空気。

対策:小分け&脱気、使い切り量に分割。

 

・水っぽくなる → 解凍置きでドリップ流出。

対策:凍ったまま加熱、鍋なら煮汁をソースへ二次利用。

 

・見切り品の大量仕入れでロス → 菌糸老化で香りが弱い。

対策:加工専用と割り切る。香味油・ペーストに。

 

・高級原木しいたけを常時仕入れ → 客単価に合わず利益圧迫。

対策:限定メニューに絞り、通常は菌床+冷凍で運用。

 

きのこ仕入れ時に覚えておきたい天候リスク

・台風/線状降水帯:九州の出荷・物流に影響。週次の発注を2回に分割し、遅延を吸収。

・長雨・湿度高:菌床栽培の品質ムラ。受け入れ時の外観検査(ぬめり・変色)を徹底。

・急な冷え込み:相場の“買い”が増え価格が動く。規格外・MIXの確保で価格圧力を回避。

・為替変動(輸入マッシュルーム):コスト上振れ時は、国産きのこMIXで代替してメニュー平均原価を平準化。

 

以上については毎年のように起きていますし、昨年から引き続きの円高円安の影響により物流のコストも大きく変化していくのを皆様ご存知かと思います。ぜひ忘れずにリスクについても確認していきましょう。価格変動や産地別については前回の記事で詳しくご紹介していますのでぜひこちらも併せてご確認ください。

きのこ仕入れFAQ

Q. 冷凍すると栄養はどのくらい失われますか?

A. 水溶性ビタミンに比べ、きのこの主要栄養(ビタミンD・βグルカン)は影響が小さいと考えられます。適切な急冷・密封保存なら実用上の損失は限定的です。

 

Q. 解凍は常温?冷蔵?

A. 基本は解凍しない。凍ったまま加熱し、ドリップをソースやスープに取り込みます。

 

Q. どのくらいの期間保存できますか?

A. −18℃以下で1〜2か月を目安に。香りが命の品目は早めの回転を。

 

Q. 生食はできますか?

A. マッシュルーム等一部は可能ですが、業務衛生の観点では加熱提供が安全。冷凍品は加熱前提で。

 

まとめ:きのこ冷凍をマスターして一歩先の調理へ

冷凍きのこは、栄養を守りつつ旨味を増幅させる戦略的な仕込みです。東北・九州・輸入の三段構えで調達し、バラ冷凍→凍ったまま調理の運用を定着させれば、味・原価・スピードの三立が可能。10〜11月の天候リスクにも強く、繁忙期に安定したクオリティを出せます。“冷凍=妥協”という先入観を捨て、旨味を設計する——それが秋の味覚を楽しみながら物価高への勝ち筋です。ぜひご活用いただけますと幸いです。

 

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